株主代表訴訟

株主代表訴訟

  取締役等の役員は,その任務を怠ったときは,会社に対し,これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条等)。

 

 株主は,会社(監査役)に対し,この役員の責任を追及する訴えを提起するよう請求することができます(会社法847条1項)。

 公開会社においては6カ月前から株式を保有していることが必要です(同項)。

 

 会社(監査役)が,株主から請求を受けた訴えを提起しない場合は,請求した株主自らが会社を代表して訴えを提起することができます(同条3項)。

 この訴訟を株主代表訴訟といいます。

 役員間の情実により役員責任が不問に付されることを防止して,会社の利益を確保するためです。

 会社が請求から60日以内に訴えを提起しないことが必要なのが原則ですが,会社に回復することができない損害が生ずる恐れがある場合は,直ちに株主代表訴訟を提起することができます(同条5項)。

 

 株主が不当な目的でまたは理由がないことを知って株主代表訴訟を提起した場合,被告とされた役員は,裁判所に申し立てて,株主に相当の担保を立てさせることができます(同条7・8項)。

 不当な株主代表訴訟によって,被告とされた役員に生じる損害を賠償させるための担保です。

 これによって,濫用的な株主代表訴訟を防止することができます。役員にとっては有効な対抗策です。

 ただし,過度な制限とならないよう,株主が敗訴した場合であっても,不当な目的や理由がないことを知っていた場合でなければ,株主は会社に対して損害賠償責任を負いません(同法852条2項)。役員に対しても,事実上または法律上の根拠がないことを知って訴えを提起した場合等でなければ,株主は損害賠償責任を負わないと考えます(最高裁判所昭和63年1月26日判決ご参照)。

 

 株主が勝訴した場合,株主側の費用は弁護士報酬を含めて,会社の負担となります(同条1項)。

 会社が負担した費用を敗訴した役員に求償できるかは明文規定がありません。

 役員が勝訴した場合,その費用を会社に請求できるかは会社法に明文規定はありませんが,民法の委任の規定(民法650条3項)により請求できるという考え方があります。

 

 会社が損害を受ける場面は,当該会社の役員の任務懈怠だけではなく,子会社役員の任務懈怠による場合もあります。

 現行法では親会社株主が子会社役員の責任を直接追及することは困難ですが,法制審議会会社法制部会が2012年8月に公表した「会社法制の見直しに関する要綱案(案)」では,子会社役員の責任を追及するため,親会社株主による責任追及の株主代表訴訟(多重代表訴訟)が新設されようとしています。

 他方,親会社が自己の利益のために子会社に不当な損害を及ぼした場合,子会社の株主は親会社(またはその取締役)を事実上の取締役と考えて,親会社(またはその取締役)に代表訴訟を提起することも考えられます。なお,子会社による親会社に対する責任追及制度を新設すべきか議論が重ねられましたが,法制審議会はこの点の会社法改正を見送りました。

 

 株主代表訴訟が提起されるということは,コーポレート・ガバナンスが有効に機能していない可能性が示唆されます。

 役員の意識と相互監視によって,任務懈怠を生じさせないことが,肝要です。

                                                           (2012/8/9 弁護士宮藤幸一